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終末期について~看護師として現場で感じたことや学び~

① 訪問看護に込めた思いと「生活に寄り添う看護」への転機

私は今年で看護師11年目になります。訪問看護師としては6年目を迎え、日々の業務の中で「終末期ケア」に携わる機会が多くあります。訪問看護では、ご活用者様がご自宅で最期の時間を過ごすためのサポートを行うことが多くあります。今回は、そんな現場で私が感じたことや、日々の関わりの中で得た学びを共有したいと思います。


私が訪問看護の道に進んだのは、病院勤務を経て、ご活用者様の「生活」にもっと寄り添いたいと思うようになったからです。病院ではどうしても医療処置中心の関わりになってしまい、その人がどんな人生を歩んできたのか、どんな思いで療養しているのかに触れる機会が限られていました。


初めて訪問看護の現場に出たとき、玄関を開けた瞬間に感じたのは「生活の中に入っていく看護」の奥深さでした。ご活用様の食卓の風景、部屋の飾り、家族との会話などすべてがその人の人生を物語っていました。看護師としての役割は、単に医療を提供することだけではなく、「その人らしく生きる」ためにあるのだと、強く感じた瞬間でした。



② 終末期ケアに求められる支援と、医療職としての葛藤

訪問看護は、ご活用者様が住み慣れた自宅で安心して療養生活を送れるよう支援するサービスです。とくに終末期においては、身体的な症状の緩和だけでなく、精神的・社会的なサポートも重要になります。医師やケアマネジャー様、ヘルパー様など、多職種との連携を図りながら、ご活用者様とご家族の思いや希望に沿ったケアを提供しています。


また終末期ケアには、常に葛藤がつきまといます。たとえば、疼痛の緩和と意識の清明さとのバランスです。あるご活用者様は「できるだけ意識ははっきりしたままでいたい」と希望されていましたが、がんの疼痛は非常に強く、医療用麻薬の使用が必要でした。

痛みを取れば眠気が強くなる。でも眠気が出ると「もっと話したかった」と後悔が残るかもしれない。そんなジレンマに向き合いながら、ご家族とも密に話し合いを重ね、最終的には「本人の選択を大切にしよう」という方向で一致しました。


正解がないからこそ、「その人にとっての正解」をチームで一緒に模索する。終末期ケアの本質は、そうした地道な対話と寄り添いの中にあるのだと思います。



③ 信頼関係の構築とコミュニケーションの工夫

訪問看護の大切な部分は、ご活用者様とそのご家族との信頼関係を築くことです。初回の訪問時、緊張しているご活用者様やご家族の不安を和らげるために、私は最初に軽い世間話をすることが多いです。たとえば、天気や日常の小さな出来事を話題にして、徐々に会話の幅を広げていきます。


こうしたコミュニケーションを通じて、少しずつお互いの距離が縮まり、ご活用者様やご家族が心を開いてくれる瞬間が訪れます。その時こそ、信頼関係が本格的に築かれる瞬間です。この関係性がしっかりしていないと、最期の時を迎える支援にも不安が残ります。信頼を積み重ねることこそが、安心感を生む鍵だと実感しています。



④ 多職種連携と、緊急時対応で実感するチームの力

訪問看護の終末期ケアでは、多職種との連携が非常に重要です。私は医師やケアマネジャー様、薬剤師、ヘルパー様と密に連絡を取り合い、チームとして支援を行っています。特に終末期においては、症状が急変することもあり、迅速な対応が求められます。


ある夜間の訪問時、呼吸が急に苦しくなったご活用者様に対応した際、すぐに主治医と連絡を取り、薬剤師にも緊急で薬の調整を依頼しました。医師と薬剤師の素早い対応により、ご活用者様は痛みや息苦しさを和らげることができ、家族の方々も安心した様子でした。多職種で協力し合うことで、個々の専門性を活かし、より質の高いケアが提供できるのだと改めて実感しました。


終末期ケアでは、ご活用者様の症状の変化やご家族の意向、提供したケア内容などをより正確に記録することが求められます。これにより、次回の訪問時に適切な対応ができるだけでなく、他の医療スタッフとも情報を共有でき、スムーズな連携が生まれます。



⑤ 「その人らしい最期」を支える:思い出作りとグリーフケア

終末期ケアの最後は、最期の時を迎えた後のご家族へのサポートです。看取り後、悲しみに暮れるご家族を前に、どのようにサポートできるかが重要です。


私が特に心に残っているのは、大腸がん末期で禁食中のご活用者様が看護師同行のもと、ご夫婦で思い出の強い熱海に2泊3日の旅行に行かれたときのことです。旅行後に写真を拝見させて頂くと、どの写真も普段見ない程の笑顔で写っておられました。最期を迎えるにあたって、思い出作りの一環として楽しんでいただけたことに、私も心から嬉しく思いました。


その後、最終的に最期の時も穏やかに自宅で迎えられ、家族全員が温かい気持ちで過ごされたことが、今でも強く印象に残っています。家族から「家で最期を迎えさせてあげられて、本当に良かったです」と涙ながらに言われた時は、その言葉が胸に響きました。看取り後も、家族が心穏やかに過ごせるよう、私はその後もグリーフケアを行いました。終末期ケアの仕事は、単に身体的なケアだけでなく、心のケアも含まれていることを強く感じます。


訪問看護は病院とは違い、生活に密接に関わるケアが求められます。ご活用者様ひとりひとりと向き合い、その人の人生に寄り添うという責任の重さを感じながらも、非常にやりがいを感じています。これからも、私自身のスキルや知識をさらに深め、より質の高いケアを提供できるよう努力していきたいと思っています。訪問看護は「その人らしい最期」を支える仕事です。今後も、チームとして連携を深め、ご活用者様ひとりひとりに寄り添った支援を続けていきたいと心から思っています。


 
 
 

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