訪問看護の未来を語る意見交換会@宮崎大学

訪問看護の未来を語る意見交換会

2020.7.14

多江様インタビュー.png

◆訪問看護の未来を考える意見交換会◆

 

宮崎大学の在宅看護の担当教員である吉永様と田上様そして弊社代表の多江が、訪問看護に関する意見交換会を開催しました。

本日は訪問看護ステーションが乱立する中での経営の必要性や、エリア課題の解決方法、さらには新卒の学生が訪問看護を選ぶ際のポイントなど、看護学生に限らず、訪問看護に興味がある皆様が気になること満載のインタビューです!!

 

 

◆訪問看護ステーション運営に必要なスキルは実は何か?

吉永様:
多江様は都心部でLE.O.VE株式会社として訪問看護ステーションを31ステーションを経営されており、関東圏で言えばトップクラスの訪問看護ステーション数になると思います。様々な相談をされることが多いと思うのですが、どのような相談をされる事が多いのですが?やはり看護に関する相談が多いのでしょうか?

 

多江:
私自身も看護師として、訪問看護師として働いていました。精神科も含めて経験しているので看護に関しては0~100まで全て知っている自信はあります。東京医療保健大学とか専門学校などでも「訪問看護」の文脈で色々講義させてもらっています。

でも実際に相談される内容というのは「看護/訪問看護」の手技の話ではなく、実は訪問看護の「経営」の相談をされることが一番多いと思います。

 

吉永様:
経営ですか!確かに看護師としての技術があっても、経営を学ぶ機会は看護学生も少ないので、多江様のお話を聞ければとても有難いですね。ステーションはドンドン立ち上がっていますが、軌道に乗せるのは凄く大変だと聞いているので。具体的にはどのような話をされるのですか?

 

多江:
経営って言っても様々な要素があるんですよね。経営の中に包括される組織論やコミュニケーションスキルやビジネスマナーとかも含めて、社内外問わず訪問看護ステーションを経営/運営するための重要性を伝えるようにしています。

株式会社を運営していると、看護師は「経営」や「利益」と言ってもなかなか腹落ちしにくい部分があるんですよね?それは看護師は看護師として働いているので。でも例えば「利益」という言葉を「地域貢献指数」と変えてみるとどう感じると思いますか?不思議と看護師も理解してくれて「地域貢献指数を大切にしないと!!」と意識が変わってきてくれるのです。

ほんの小さなコミュニケーションの伝え方だけで、組織も変わり経営も変わってきます。LE.O.VE株式会社はこの改善を多々繰り返し、伝達の方法にもこだわり、看護師が理念を元にスッと腹落ちして日々の行動が出来るように、「経営」をしていると思います。

比較的都内はステーションがドンドン立ち上がると聞きますよ。毎年60ステーションは立ち上がり、毎年30ステーションくらいはなくなっているとも聞きます。

私も色々な会社との繋がりがあると思うのですが、この10年は実は企業もお金を持っていた印象なのです。「何かに投資をしたい。」と経営的な判断をして、スモールスタートできる領域として「訪問看護」に投資をする企業も少なくなかったと思います。

でも訪問看護の経営はやっぱり難しいと思います。志がなく立ち上げても上手くいかないと思います。経営や利益の為に看護を知らない人が訪問看護ステーションを立ち上げても、想いがないから上手くいきません。逆に想いが強い看護師が訪問看護ステーションを立ち上げたとしても、経営を知らなければこちらも同様に上手くいくことは難しいと思います。

訪問看護ステーションを立ち上げること自体は簡単にできてしまいます。でも看護師の採用はどうすればいい?患者の獲得はどうすればいい?経営はどうすればいい?看護理念はちゃんと決まっているか?などを複合的に判断して、ステーションを運営しなければ、想定外の事が多々起きてしまうと感じています。

看護の想いも、そして経営の技術も共に高い志で運営するのが医療であり訪問看護ステーション経営だと思っています。

 

 

◆宮崎県での訪問看護の課題…そして訪問看護の質を上げるための必勝法をこっそりお伝えします

吉永様:
確かに看護の想いは看護師全員が持っていると思います。学生たちもその思いを持って入学してくれていましたから。でも経営と言われると学生も「はてなマーク」になってしまいますね。これは起業したことない企業人も同様に、頭や知識としては知っている部分と、実際に起業をして、様々な困難を乗り越えてきた多江様とでは言葉の重みが変わってきますよね。

ぜひ多江様に教えていただきたい事が。。。宮崎の訪問看護で困っている事と言えばやはり「移動距離」になります。片道60分とか・・・遠いと90分とか・・・事実訪問件数が少なくなってしまう状態だと感じてしまっております。都内では交通インフラも整い、利用者もエリア偏差少なくいらっしゃると思いますが、宮崎県の訪問看護はこの「移動距離」がネックになってしまうのですよ。この課題に対してぜひ多江様にアドバイスを頂けると!!

 

多江:
距離に課題があるのは、ある一定は間違いないと思います。47都道府県の面積や人口動態などを考えると、移動距離の問題は想定されます。ただ私たちLE.O.VE株式会社でもエリアマーケティングなどをするのですが、人口が20万人いるエリアであれば、どこの場所にステーションを出すか?さえクリアする事が出来ていれば、移動時間を30分以内で訪問する事は可能だと考えています。

つまり逆に言えば、ほとんどの市区群で訪問看護ステーションの経営が成り立つことや、移動問題が解決を意味していますし、経営を間違う事がなければ赤字になることはないと考えています。移動距離も課題の一つだと思いますが決定的な課題かと言われれば、実はそうではないと個人的には感じています。

先に伝えた訪問看護ステーションが毎年、毎月宮崎県内でつぶれてしまうとすれば、移動距離が起因する利用者の数の問題ではないと考えています。もちろん売り上げは都内や都市部と比べて変わると思いますよ。でも訪問看護ステーションが上手くいかないのは経営の問題、もっと具体的に言えば“人間力”や“組織力”の問題だと思います。

ステーションに対する作り方と言えばいいのか、段階が大切だと思います。「患者が見つからなくて・・・」という声も少なからず聞くことはあります。ただステーションの最初の段階では「非効率だろうが、患者を紹介してもらえる環境を作る事。」これがまずは大切だと思っています。

 

インタビュアー:
宮崎県は数字上でみると、クリニックの数が少なく、病院が患者様をかかえているのかな?という印象もありますが、まずは病院との関係性を築く事も大切という事でしょうか?例えば移動距離を除いた宮崎の訪問看護の課題感はどのようなものになるのですか?

 

田上様:
そうですね。この辺は個人の主観が入ることは大前提になるのですが、きっと宮崎県の医療として看護として横のつながりがもっと強くなればよりよい医療のサービス提供ができると思うんですよね。それぞれがライバル関係であることは、サービスの質を上げるために大切な事だとは思います。

ただ患者にとってのベストな医療は何か?を考えると、宮崎県としての連携はもっと強くなることが出来ると思いますね。多江様はこの辺は経営目線で考えるとどのようにお考えになるのですか?

 

インタビュアー:
確かに医療と言えど患者様あってのお仕事になりますね。このコロナ禍になって、人が外に出なくなったので、ケガや病気になる人も少なくなったと私も聞いたことがあります。例えば花粉症の患者も外に出ないので今年は圧倒的に減ったと伺いました。だから耳鼻科のクリニック等は患者が集まらず経営的な打撃を受けたとも聞いたことがあります。コロナという誰も経験したことのない、このコントロールしにくい観点も含め、経営的に多江様が訪問看護の質を上げるために必要な事をどう考えるのかはぜひ伺いたいです。

 

多江:
どうしてもお金が絡んでしまうと良い意味でも、悪い意味でもライバル関係であることは間違いないですよね。だから大切な事は第三者の目線で、状況を俯瞰で考えるようにすること、そして患者の目線に立ってベストを提供する事だと考えています。

医療や看護のサービスの質を考えると、患者目線に立てば、ずっと安定的に看護師が看護のサービスを供給できる訪問看護ステーションに見て貰った方がいいはずなんですよね。LE.O.VE株式会社は150名の看護師がいて、全国でも弊社しかないと思っています。

訪問看護ステーションを運営していれば、「看護師に休みをとらせてあげたい」という想いもあれば、看護師だって「体調不良」になってしまう事もありますよね。これは不可抗力な部分もありますが、看護師が少ないステーションになってしまうと、その時に患者に看護が提供できなくなってしまう可能性もありますよね?そう考えると、サービスの質を上がる為には“最低限の規模化”というのは必要になってくると考えているのです。

看護の質を上げるためにも、LE.O.VE株式会社は社内に大学を作り、人間力UPの為にも様々な勉強会や外部研修などもやっています。訪問件数の為に訪問看護をやるのではなく、質の高い訪問看護の為に、規模化をして、安定的な質の高いサービスが出来るようになっていると思います。

切磋琢磨するライバル関係はもちろん大歓迎なのですが、患者の為にならないライバルになってしまうと訪問看護の質を全体的に下げてしまわないか危惧しますね。

◆学生が就職活動で知るべき病院と訪問看護、決定的な違いは何か?

吉永様:
サービスの質を上げるための規模化というのは非常に興味深い話ですね。確かに規模化をすることで移動距離の問題を解決できると思います!!最近は学生の考え方も変わりつつあるので、新卒で訪問看護をやりたい学生も増えていると思います。ただ新卒を受け入れることができる訪問看護ステーションはまだ少ないのが実情だと思うのですが、一方で将来的に訪問看護やりたい学生も多数います。それまでに何をしておく必要がありますか?

 

多江:
私自身が学生の時にギリギリ訪問看護の実習が始まったんですよ。もうそれは1日10件とか回っている時代でした。看護学生時代は正直私も訪問看護に関しては興味が持てなかったんです。そして今になって、大学や専門学校で学生に講義をするじゃないですか。やっぱり聞いてみるんですよ私も。「学生の皆さん!!訪問看護ってどう思いますか?」って。

すると学生のほとんどが「ベテランしかできない業界」とか「一人で判断する事ができない業界」って言うのです。これが本当にビックリで、私が学生だった20年前と全く同じこと言ってるじゃないですか、笑。

つまりこの20年間、訪問看護業界って変わることが出来ていないって事ですよね?でもLE.O.VE株式会社には毎年新卒の学生が来ます。1年はしっかりと勉強してもらったり、先輩たちと同行してもらっていますが、2年目からはしっかりと一人で外に出ることが出来るのです。訪問看護業界も変わりつつありますし、LE.O.VE株式会社も新卒の為の訪問看護はもっと促進したいと考えています。

 

吉永様:
1年間教育の時間にあてたりは本当に凄いですね。そう考えると新卒でも訪問看護をする事は全く不可能な事ではないという事ですよね?

 

多江:
新卒でも訪問看護は可能です。ただし私は条件があると思っています。新卒で訪問看護をやりたいと思うのなら、「病院に戻れなくなる可能性がある」この事をしっかりと理解してくれているのであれば、飛び込んでくる事は可能です。

なぜかといえば訪問看護と病院ではアセスメントが180度違うと考えているのです。訪問看護は断続的なアセスメントだと思います。1週間後の事や1か月後の事、1年先のことを考えながらアセスメントを考えていく。

一方で病院のアセスメントは連続した看護だと考えています。分単位で時間単位で24時間の看護アセスメントが必要だと考えています。つまり訪問看護と、病院のアセスメントは全く違うものだと考えているのです。ですので学生の皆さんにはぜひ自分自身の胸に聞いてもらいたいのです。自分自身がどちらのアセスメントを極めたいと思っているのかと。

病院に戻れないって言ってしまうと「そんな極端な!!」って思われてしまうかもしれませんが、LE.O.VE株式会社を退職して病院に行ったスタッフも実際にいるのです。でも3か月で戻ってきましたよ。これはアセスメントの違いもありますし、訪問看護と病院では築くべき人間関係も変わってしまうんですよね。

周りの看護師に相談はもちろんしながらも、自分自身の意思で看護をすることができる訪問看護の魅力がここにはあるのだと思います。なので私は新卒で訪問看護をする学生たちが増えてくれるのは本当に嬉しい話ですし、その覚悟に答えたいと思っていますよ。

 

田上様:
確かに人間関係の作り方は大きく変わってきてしまいますよね。そこはなかなか授業で教えにくい部分でもありますし。特に病院の実習にいってしまうと、病院看護で考え方が固まってしまう学生も少なくないように思いますね。地域の在宅医療に対する考えか方がカリキュラムの変更によってもっと変わり、これからの看護学生の為になればと思っています。

知識という面では今の看護学生は様々な事を知っていますし、授業でも様々な分野を対応していると思います。ただ看護過程のアセスメントも“HOW TO”といいますか、“方法論”を知っているだけになってしまい、“自分自身でどう考えるか?”を伝えることが出来ていないと思います。医療や看護の泥臭さって言えばいいですかね?感性をいかに育てるか?これが今後の教育現場のカギとなっていると思います。本来の看護の精神で考えれば間違いなく在宅医療だと思いますし、学生たちも直感的にそこは理解していると思います。

 

多江:
まさにおっしゃる通りでナイチンゲールの精神に戻るべきだと思います。その精神やスキルが身につくのは在宅医療であり訪問看護だと感じています。長く看護師をしていたり、病棟勤務をしていると、どうしてもこのナイチンゲールの精神を忘れてしまう事があるのですが、学生にも断続的なアセスメントと、連続的なアセスメントの違いを理解してもらいながら、訪問看護にドンドン挑戦して欲しいと思います。私はどこに行っても、同じ話をブレずにしていると思うので、学生も率先して情報を取りに行ってほしいと思います。

このインタビューを読んでくれた学生たちが、いつか「多江さんのインタビューを読んで訪問看護を選びました!!」と言ってくれれば本当に嬉しい事ですよね。そしてこうしたご縁を頂けたので、宮崎県の在宅医療や訪問看護がもっと盛り上がり、またこうした意見交換会が出来れば面白いですよね。

 

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以上になります。

最後までお読みいただきありがとございました!